公認会計士がやる!株主総会レポート

公認会計士による新興株の株主総会出席レポート

第5回 3678メディアドゥホールディングス株主総会レポート2018.5.30

 今月最後の株主総会はメディアドゥホールディングスです。3479TKPと開催時間が重なってしまったのですが、TKPは業績・株価とも絶好調であり、むしろ行く必要性が乏しいと判断し、メディアドゥホールディングスの総会に行くことにしました。本社で総会をやるということもこちらを選んだ動機の一つです。

 同社は著作物のデジタル流通事業の会社です。電子書籍の取次業といわれていますが、そう単純なビジネスモデルではないことがわかりました。同社は2013年に東証マザーズ上場、2016年に東証一部に市場変更、2017年に持株会社に移行し、連結決算を2018年2月期より開始しています。昨年業界2位の同社が業界1位の出版デジタル機構を買収し、一気に成長し、売上400億円ほどの大きな会社となりました。

 本総会は10時に開始し、11時25分頃に終了しました。その後休憩を挟み事業説明会を開催しました。終了したのは13時前というロングラン会議でした。特に後半の事業説明会は、開催する必要などないにもかかわらず開催していただき、内容も株主に対して経営者の想いを伝えたいという熱さ・誠実さが強く伝わってくる素晴らしい会議でした。

 地下鉄竹橋駅・皇居の平川門前のパレスサイドビルはかなり古いビルで、その5階の本社会議室で開催されました。席は全部机付きで135席もありました。総株主は4231名ですが、出席株主は80名ほどではなかったかと思います。背広・ワイシャツ姿の方も多く、今までの総会とは雰囲気が違いました。意外にもプロジェクターはなく、総会後、事業説明会の時に搬入されました。高山監査役は欠席でした。高山監査役は兼任多すぎです。総会でも重なったんでしょうか・・・。また、総会に選任していた森取締役が辞退するというアクシデントも発生しています。

 さて、今回の最大のテーマは海賊版サイト漫画村問題です。

 報告は30分ほどで終了し、質疑応答に入りました。概要は以下のとおりです。

1、(質問)3号議案の譲渡制限付株式はどういう目的で発行するのか?(回答)報酬とは別で株主と同じ視点で経営に携わってもらうためにインセンティブとして役員に株式を付与する目的である。過去のストックオプションはすでに付与したものはそのままであるが、インセンティブ付与型ストックオプションの新株予約権は付与しない。

2、(質問)ストックオプションを与えるとき何を指標として与えるのか?(回答)具体的なKPIは定めていない。その対象者の業績に対する貢献度合いを社長が判断して付与している。

3、(私の質問1)海賊版サイト漫画村の問題について4月13日の決算発表から現在までにその影響がどのように変化しているか?(回答)昨年9月より猛威をふるっていた漫画村については4月13日に閣議決定でサイトブロッキングされることになり、漫画村等違法サイトはクローズになった。前期は大変業績に悪い影響を与えたが、それがなくなり当然ながらその後は非常にいい方向に向かっているし、業績にもいい影響を与えると思う。

4、(私の質問2)当社が出資している日本インターネット総合研究所のイスラエル市場上場の動向はどうなっているのか?(回答)一度延期になったが、上場に向けて最終調整している。

5、(私の質問3)電子図書館展開は私の素人的考えでは多数の者が無料で読めてしまうので、会社にとってはかえってマイナスなのでは?(回答)紙の本の貸し出しと同じで、その図書館が電子書籍を例えば3冊分買えば、3人の人にしか同時に貸し出せない仕組みとなっており、問題はないと考えている。

6、役員は3名退任しているが特に問題なし。

7、(質問)海賊版サイトの影響であるが、2018年2月期の目標業績未達について具体的な影響はどれくらいあったのか?(回答)1Q2Qは問題なかったが、3Q4Qに大きな影響があった。しかし具体的な数字ははっきりわからない。

8、(質問)有休消化率はどれくらいか?従業員の男女比率は?(回答)有休消化率は把握できてないが、しっかりとれていると考えている。多分7、8割は取れている。平均で4割くらいが女性の比率

9、(私の質問4)金融債務が100億円を超えており、一方資産はのれんが65億円、投資有価証券37億円でほぼ対応している。金融債務がかなり積みあがっている状況で、さらなる投資を考えたとき、さらに借入金で調達できるのか、それともエクイティファイナンスするのか?(回答)現時点では買収案件はなく、金融機関から調達する必要も、エクイティファイナンスする必要もない。もしそういう案件があってもスピード感や希薄化を考えれば金融機関から調達すべきと考えている。もちろん将来的にはエクイティファイナンスするタイミングがあるかもしれない。

10、(質問)配当性向20%以上といっているが、今年は30%超となっている。今後もできるのか心配(回答)昨年は配当性向20%かまたは10.5円の大きい方を配当するという方針とした。業績が悪かった結果10.5円となり配当性向が30%超となってしまった。今後も配当性向20%を維持する方針である。株主の皆様に対する利益還元については大きな経営目標と考えている。

11、売上原価が高いのは出版社にお支払いする印税があるから、コンテンツ卸売り事業が中心なので利幅は決して高くない。システム開発や他事業の開発により原価低減をはかっていく。

総会終了後、休憩を挟んで事業説明会が開催されました。1時間を超える説明会になりました。概要は以下のとおりです。

1、当社の事業理念である「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人に届けること」を達成するためのMAを進めてきた。①電子書籍の創作支援(コンテンツを作るための会社)、②販促支援(マンガ新聞、ブラウザーの提供会社Lunascape)、③電子書籍の取次(出版デジタル機構)の3つにセグメンテーションされる。①が上流、②が中流、③が下流、全てをおさえたい。

2、グループ経営の経営陣はC職会議という閣議制度にし、CEO、COO、CFO、CTO、CAO、CBO、CHOで経営の重要事項を決めてゆく

3、出版社等のコンテンツホルダーから仕入れ、それを卸すという流通の真ん中に立つビジネスモデルは上場会社では当社だけ、業界でも当社入れて2社のみ(3社あったが出版デジタル機構を買収したので)

4、当社の株価であるが、上場当初は時価総額400億円まで行った。当時は環境が良かった。過去最大の出来高になったのは出版デジタル機構を買収した時。昨年の9月以降に顕在化した漫画村の影響が出てから株価は下げはじめた。そして先日のサイトブロッキングの閣議決定から株価が少しずつ戻り始めている。昨年の2Q時点で時価総額350億円までいった。現在220億円くらい。まだまだ頑張らなければならない。まずは、過去最高の時価総額400億円を超えるくらいの事業展開をしてゆきたい。・・・・・ここまで具体的に株価について語ってくれた経営者は初めてです!

5、電子書籍関連のインフォコム・パピレス・ビーグリー・イーブック・アルファPと比べてPERは一番高い。ROEは中間の位置となっている(9%)。10%を超えるように成長しなければならない。

6、当社のミッションは「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人に届けること」であるから、自分たちの利益だけを考えて行動していない。電子図書館などは理念がなければやってないだろう。そして目指すべきは「パブリッシング・プラットフォーマー」となることである。業界NO1の電子書籍業者になることではない。すべての電子書籍の流通に関してはメディアドゥのシステムを通過する、全てのコンテンツに関してメディアドゥ系列で仕入れる、そういうような中間のポジションとしてプラットフォーマーになりたい。そのために組織は①クリエイティブであること、②イノベーションを続けること、③プロデューサーであること(下請けであってははならない、他人が作ったものを売る営業会社であってはならない)、であるべきと考えている。

7、電子書籍業界もかなり大きくなっており、成長率に関しては落ちていく可能性がある。当社は、自らマーケットを拡大させ、その中のシェアを拡大してゆかなければならない。

8、書籍の市場とその電子化割合は以下のとおりであり、コミック以外はまだまだ開拓余地がある。

 ➀コミック分野(電子書籍1711億円(51%)紙書籍1666億円(49%)計3377億円)、②文字もの分野(電子書籍290億円(5%)紙書籍5486億円(95%)計5776億円)、➂雑誌分野(電子書籍214億円(3%)紙書籍6548億円(97%)計6762億円)

9、当社の出版業界における現在のポジションが最大の優位性であり、それを確立するためには出版デジタル機構との組織一体化が重要なテーマである。その中でもシステムの統合が最大のテーマである。

10、この後、新しい分野である「音声自動文字起こし、AI要約」の話で、音声自動文字起こしの実演がありました。しゃべった言葉がほぼ同時に文字化され、それが220か国語で同時に文字化できるというシステムです。実際にみるとそのスピードに驚きました。誤起こしもありますが、気にならない程度です。また本をAIで要約し、読むのに3時間かかる本も30分で要約して読めるようにしているそうです。先日AI展があったそうですが、すさまじい評判を呼び、名刺交換1800人としたとのこと。このシステムを早く確立し、定額課金方式等により事業化したいとのことです。

11、AI・ブロックチェーンの研究開発をしており、電子書籍分野の活用ももちろんであるが、さまざまに事業が広がっていく可能性がある。他の電子書籍会社ではキャッチアップできない分野であろうと考えている。

以上のとおり事業説明会は素晴らしいものでした。一番いい株主総会だったと思います。お土産はKAORUの木頭柚子というラスクで、超絶品でした。お土産も相当吟味してるのでしょう。こんなとろけるようなラスクは食べたことがありません、渋谷ヒカリエB2階に入ってるらしいです。超美味しいですから是非ともご購入ください。家族の分の議決権行使書も持っていったら人数分3つもらいました。そんな小さなやさしさもよかったです。

以上メディアドゥホールディングス株主総会レポートでした。