公認会計士がやる!株主総会レポート

公認会計士による新興株の株主総会出席レポート

第8回 3561力の源ホールディングス株主総会レポート2018.6.25

8第8回は力の源ホールディングスの株主総会レポートです。

同社は、「一風堂」というブランドの博多ラーメン店を中心に展開している会社です。2018年3月末現在で224店舗(国内134、海外82、その他8)(直営167、ライセンス契約店57)を運営しています。時価総額は332億円です。2025年までに国内300店舗、海外300店舗を目指しています。

創業33年目を迎える同社は、2017年3月に東証マザーズに上場し、1年後の今年の3月には東証1部に昇格しています。国内は究極のレッドオーシャン市場の飲食事業ですが、海外での展開力にその成長性が期待されています。

会場はJR博多駅から徒歩10分のグランドハイアット福岡で午後1時より開催されました。キャナルシティ博多という所にあるのですが、構造が複雑で、何階なのかもいまいちわからず、方向感覚がなくなるような場所で散々迷いました。座席数はイスのみ295席ありました。出席者は150名(総株主数7818名)といったところでしょうか。博多では超メジャーなラーメン店でしょうから、いろんな関係者のような感じの方が出席されており、着物姿の女性もいました。ちょっと他の総会とは雰囲気が違います。大きいディスプレイがあり、それで説明する方式です。

経営陣は、創業者の河原会長と、実務者である清宮社長の2本柱で運営しています。粕谷取締役もなかなか頭の切れる方とお見受けしました。

質疑応答の概要は以下のとおりです。

(1)東証1部に昇格してから株価が下がり続けている。中間決算から東証1部発表まで1000円前後から2700円まで急上昇し、短期的なトレードによる値動きがあった。その後、本決算発表後材料出尽くしにより下げ、信用取引期日の投売り、外資系の空売り勢にやられて下げてしまった。需給面の株価の動きであり、会社の原因によるものではない。やはり基盤は企業業績で、これをきっちり達成し、それにブランディングやIR活動を通じて企業価値向上をしてゆきたい。

(2)女性の幹部登用や外国人役員の必要性は役員会でも議論となっている。女性とか外国人とかではなく、適所適材で候補者選定をやってゆきたい。やはりラーメン業態なので女性は2割程度しかいない。今後は男女同じ比率で採用したい。そうやって女性幹部も養成していきたい。

(3)出店のための資金計画については、金融機関とシンジケートローンを締結しているため、大丈夫である。飲食店は投資回収が読み易く、きっちりやれば問題ない。

(4)(質問)牛丼チェーンやコンビニは店舗が減少している中で、積極的な店舗展開をするという方針で本当にいいのか?海外もリスクが高い。(回答)国内は、投資・人件費を抑えた出店、すなわちフードコートを中心に出店を進めている。海外は、インバウンドアウトバウンド含めて東京オリンピックに向けて事業成長することは、そこからの成長を加速するためにも大きなチャンスだと思っている。オリンピックまでは事業規模を拡大してゆく方針である。そこまで成長すれば2020年以降は営業キャッシュフローと投資キャッシュフローが同じくらいになり、多額の資金調達が必要にならなくなる。

(5)国内は300店を目指すと言っているが、「一風堂」の出店は慎重にやっていきたい。既存店を再強化する。出店のチャネルが大きく変わってきている。商業施設(モール等)に人口集積してきており、投資回収の比較的早いブランドで出店を進めていく。海外は50店舗を超えるまではリスクの高い出店であったが、13か国84店舗になった今では、リスクを分散できる形で信頼できるパートナーが海外にできてきた。

(6)海外事業は、中国中心に合弁事業からライセンス事業に切り替えているが、中国では現地の出店の意思決定の迅速性が非常に大事であるから、合弁で日中双方で合意してたら遅くなり、いい物件を逃すので、中国側が独自で判断できるライセンス方式にした。

(7)(質問)海外事業売上高62億円のうち、ロイヤリティ収入はどれくらいか?ライセンス契約の収益性は直営店に比べて高いのか?(回答)ロイヤリティ収入は言えない。しかし現在の海外収益はほぼ直営店の利益であり、ロイヤリティ収入はほとんどない。これまで契約条件がよくなかったので、ライセンス契約に切り替えていっている。ロイヤリティ収入はそのまま営業利益に直結するので、ライセンス契約の店舗が増加していくことはこれからの収益には大いに貢献すると予想している。そういうフェーズに入ってきた。

(8)(質問)株価にはブランディングが大事である。力の源ホールディングスという名前では何の会社かわからない。一風堂という名前の方がよかったのではないか。(回答)力の源=一風堂とは確かに認識されていない。33周年の節目に向けてしっかりPR,IRしてゆきたい。

(9)(質問)海外では一風堂は1杯2000円、日本でも1杯1000円と高いので高級ブランドである。もっと安いブランドがあってもいいのではないか?(回答)ブランド展開を現在整理している。現在海外各店舗特にシンガポール10店舗で、ラーメンにいろいろ変化をつけながら実験中である。より低価格でクイックなブランドを検討中である。ニューヨークのフードコートでKURO-OBIという鳥白湯の低価格のブランドラーメンを展開して実験している。

(10)(質問)アメリカンチャイニーズレストランのPANDA EXPRESSを買収したが、チープな味なので日本人に合わないのではないか?(回答)PANDA EXPRESSの出店は日本国内で味が同じでいいか、いろいろ悩んだが、川崎や木更津に出店したら、懐かしい味だということで元留学生や外国人に人気があってうまくいっている。ハワイやロサンゼルスで食べてた人が多い。そのため、味は米国にそろえた。

株主総会は1時間10分程度で終了しました。その後、20分の休憩を挟んで「経営方針説明会」を開催しました。

経営方針説明会の内容は、①会社の概要、②事業環境、③グループの特長、④成長戦略と中期目標、⑤暖簾分け制度、の報告でした。

興味あった論点をかいつまんで説明すると以下のとおりです。

国内事業環境は、外食・中食の切り分けができなくなっている。セブンイレブン(コンビニ)・アマゾン(宅配)・ウーバー(宅配)がどういう展開をするのか注視している。店舗数増加がそのままチャンスになる時代は過ぎ去った。外食・中食・コンビニ・宅食・宅配を一体で見なければならない。トリドール・吉野家等外食のメインオペレーターがどんどんラーメン店を買収している。また、とんこつ・しょうゆ等のジャンルが細分化している。単一業態依存リスク、全国展開依存リスクもあり、マネジメントはエリアマネジメントに変える。宅配宅食対応のためにPANDA EXPRESSを買った面もある。

海外は13か国出ているが、シンガポール、オーストラリア、USA、台湾、中国、フィリピンの順に業績が良い。今期来期は北米(西海岸、ニューヨーク)と東南アジアをターゲットにしている。

2025年までに国内300店、海外300店、来客数1億人を目指す。工場建設等の商物流改革にも取り組んでいく。

国内店舗展開は直営店もさることながら、従業員を独立させる暖簾分け制度を導入した。従業員が退職し、会社を設立して店舗を業務受託して運営する。大阪長堀店、大阪難波店、東京銀座店、札幌等28店舗を暖簾分け店舗にした。暖簾分け店舗は接客の質が既存店より高い(ビデオ報告あり)。

海外の従業員教育にも力を入れている。外国人も日本でグローバルの人材として育てていくための研修を行っている(ビデオ報告あり)。

(質問)韓国の3店舗は閉鎖したようだが、なぜか?今後は展開しないのか?(回答)ライセンス契約の会社で5年間の契約でやりうまくいっていたが、その会社は百貨店業だったがそれが傾いたのでやむなく断念した。韓国の食文化は特別で日本の外食もどんどん廃業している。ラーメンは袋麵がメインでなかなか難しい市場なので、今後は展開を予定していない。

(質問)ハラル認証、ベジタリアン、食物アレルギーの問題等海外でどう対応するのか?(回答)ハラルはまだまだ日本で正しい情報が不足している。経産省の指導が必要。また、外国企業とのパートナーシップ等で解決したい。インドネシアに直営店をつくり探っている。

説明会は1時間弱で終わりました。終了は15時20分。

お土産には、ラーメン券2枚をもらいました。帰りに博多駅中のビル10階の一風堂で白丸元味を食べました。美味しかったですが、さまざまなラーメンを食べている日本人としては、めちゃくちゃ美味しいというわけでもなく・・・・。とにかく海外展開こそが成長力の鍵だと思います。

 

以上、力の源ホールディングス株主総会レポートでした。