公認会計士がやる!株主総会レポート

公認会計士による新興株の株主総会出席レポート

第7回 4319TAC株主総会レポート2018.6.26

第7回はTACの株主総会です。
TACは「資格の学校」として有名な受験学校です。
事業は、①個人教育事業、②法人研修事業、③出版事業、の3つを主力事業としており、売上高は①が圧倒的に多いのですが利益はほぼトントン、収益は圧倒的に②に依存しています。
時価総額はわずか61億円しかありません。東証1部2094社中後ろから56番目くらいです。

同社は、私が保有する唯一のバリュー株です。バリュー株とは、私的に定義すれば、①成長が止まり、②業績が横ばいになり、③投資機会も少なく、④資金が余っている、会社を言います。
株価は「成長期待」で上昇しますので、バリュー株は安値で放置されます。一方で、潜在力はあるので、会社に変化が見られたり、事業の成長性が見直されたりすると、突然ブレイクするときがあります。

会場はJR水道橋駅から徒歩5分のホテルメトロポリタンエドモンドで開催されました。となりではファンデリーの株主総会もやっており、同社の株主でもある私としては後ろ髪引かれる思いでTAC会場に入りました。席は156席イスのみ。出席者は100人は超えていたと思われます。

同社はここ数期にわたって講師と元生徒とのトラブルに絡んで株主提案がなされており、かなり荒れるという噂はありましたが、会場は役員が雛壇に座り、株主席との間に乗り越えられないような敷居があり、従業員が何人もにらみをきかせ、株主席にも従業員・講師株主と覚しき方々が前列に陣取り拍手喝さいするわ、不規則発言・ヤジは相次ぐわ、動議は出るわ、という1980年頃にタイムワープしたかのような物々しい雰囲気の株主総会でした。通常株主の発言者にはマイクを回して発言させますが、この総会ではマイクのある設置場所に株主を移動させて発言させるというやり方です。

ショックだったのは、斎藤社長が議長として株主総会を仕切れないほどお身体を悪くされていることでした。業界のカリスマとして一世を風靡した方だけにそのお姿は痛々しく、カリスマからの事業承継がスムーズにできるのか、大きな経営課題であります。

議長は多田副社長が就き、議事が進行しました。大きなディスプレイで決算説明が終わった後、議決に移り、株主提案者に意見陳述の機会が与えられました。

剰余金の配当議案提案者は、この5年半で49億円現預金が増加し、運用含めてキャッシュも80億円あるが、この間、投資も配当も全くしていないので、期末20円の配当を要求するものでした。①平成16年3月期から平成23年3月期までは全ての利益を配当してきたこと(配当性向100%超)、②赤字に転落した平成24年以降は低配当方針に変更したが、最近では配当政策をまともに述べなくなったこと(低配当にする理由がなくなった)、③20円という配当額は、同社の株価は配当額に大きく連動するので株価上昇のためにも必要である、④株主政策が厳しすぎる、と述べました。

次にトラブルに絡んだ株主提案者が、意見を述べましたが、省略します。発言中に議長不信任動議が出たり、他の株主が発言しだしたり・・・・トラブル関係は除きます。

その後、質疑応答がありました。とにかく、不規則発言・ヤジが多く、議長もその方々を指名するため、他の株主の意見がかき消されるような感じでした。
(1)(質問)今後、安定配当は実施できるのか(回答)もともと「会計の学校」と言われていたが、最近では「公務員の学校」と言われている。いろいろ環境も変化しているので、お約束はできないががんばる。
(2)株価についても努力するとしか言えない。
(3)大阪北部地震の影響は梅田校のボードが外れるくらい。地震当日は大阪エリアは休講。
(4)(質問)オリンピック・万国博対応で、接客方法の講座できないか?(回答)継続できる講座でないと事業とならない。外国人が資格をとる講座なら考えられる。中国人が留学してくると、弁理士を取ろうとする傾向にあるので、それの対応とかが考えられる。
(5)(質問)リカレント教育について当社に与える影響は?(回答)教育訓練給付金の他、専門実践教育訓練給付金が株式会社でも認められるようになった。ITストラテジスト等高度なIT系の研修講座も対象となり、申請して許可を得た。
(6)HPを見ずらく、受講者を逃している。改善してほしい。
(7)(質問)株主優待制度の講座割引10%は少ない。受講料定価の10%引きから実際受講料総額の10%引きにしてほしい。(回答)当社は一般的に大きな割引はしない方針である。早期割引があるくらいである。総額ベースではかなりの差が出てしまうので、できない。
(8)役員報酬は、子会社兼務している場合子会社からは一切とらない。招集通知に記載している金額が全てである。
(9)(質問)今後、講座はデジタル化するのか、実教室を重視するのか?(回答)当社が誇れるのは合格実績である。それは教室で生まれる。通信と教室では圧倒的に教室が合格率が高い。合格率を重視する限り教室である。難易度が低い資格などはネットを重視しており、子会社のオンラインスクールでは1ヶ月定額980円で講座受け放題のモノもやっている。
(10)講座によって年齢層が分かれてきている。公務員・会計士は若い年齢層、社労士・税理士・鑑定士は高齢化している。当社の受講生の社会人と学生の比率は以前は7:3で学生が多かったが、今は7:3で社会人の方が多い。
(11)(質問)売上200億円でずっと横ばいである。個人教育事業は利益が出ない事業になり、法人研修事業も伸び悩んでいる。AIの時代に資格はいらないとも言われており、当社はビジネスモデルの転換期を迎えている。事業環境は良く成長戦略投資が必要であるにも関わらず何もしていないし、IRに記載もない。IRに成長戦略をもっと記載し、経営陣がそれにコミットすることで成長を果たしてほしい。中期経営計画なども示してほしい。株主利益の代弁者である社外取締役がそれをチェックし、指導してほしい。(回答)新しい事業は相当量は仕掛けている。建築士とか語学事業であるとかやっている。なかなか苦しいところは、教育・資格事業で上場しているのは当社だけで新しい事業を発表するとすぐに真似されてしまう。皆様の心に届くIRをしていきたい。

約2時間で総会は終了しました。やはり今まで出席した成長株とは違いますね。社長はお身体を悪くされ、他の役員もほとんどが昭和時代の入社であり、しかも資格村で固めた経営陣の方々です。大きな転換は難しそうです。時価総額も極めて小さいので、買収する側というよりも、される側になる可能性を感じた株主総会でした。

お土産はTACボールペン、TAC出版「おとな旅プレミアム札幌・小樽・富良野・旭山動物園」の本、32枚入り絵葉書でした。ペットボトルのお水もくれました。

以上TAC株主総会レポートでした。

第6回  7779CYBERDYNE株主総会レポート2018.6.22

第6回はCYBERDYNEの株主総会レポートです。

同社は「サイバニクス」という最先端テクノロジーによるサイボーグ型ロボットを研究開発する会社です。サイバニクスは、人間の脳・神経・筋系とロボットを脳神経から出る微弱な電位信号でつなぎ、身体が不自由な方でも「動かそうとしただけで」その意思に従った動きがロボットによりできるという、まさに「驚愕」のテクノロジーです。

同社は東証上場会社で唯一の種類株式発行会社で、山海社長の実質議決権比率は85%にも及びます。時価総額は2800億円、ずっと赤字ですが、東証マザーズではメルカリに次いで2位の時価総額です。

製品であるロボットはHALというブランドで、①医療用②介護福祉用③現場作業用があります。

①の製品は(a)「下肢タイプ両脚型」が主力製品で、身体に障がいのある方の補助の役割をし、「脳⇒HAL」だけでなく、「HAL⇒脳」というインタラクティブなバイオフィードバックにより自分の意思で動かなかった足を動かすという治療効果をも実現しています。他に(b)脳卒中対応の「下肢タイプ単脚型」、(c)これも脳卒中対応の超軽量型「肘膝単関節タイプ自立支援用(治験中)」のあわせて3種類。各国で医療機器認証がとれるか否かが重要です。

②の製品は(d)病院介護施設で介助する方が楽に作業するための「腰タイプ介護支援用」と、(e)介護される方が自分で歩けるようになる等自立するための「下肢タイプ自立支援用PRO(2018年4月販売)」の2種類。

③の製品は(f)防塵・防水対応を加えた改良新モデル「腰タイプ作業支援用(2017年12月新モデル販売)」

④周辺機器として(g)広大な商業施設・オフィスビルを自分で考えながら高速で掃除をする「清掃ロボット」や(h)HALの技術を応用したALS等身体を動かすことができない方でも意思伝達やナースコールを可能にする「Cyin福祉用(2018年夏頃販売)」が登場し、いよいよ2018年4月以降、全ての製品ラインナップ(a)~(h)がそろったということです。

会場は茨城県つくば市つくば駅前のノバホールで、11時から開かれました。大ホールで客席は1000席ありますが、出席者は400~500名といったところでした。東証マザーズ上場にもかかわらず、8万人も株主がいることを考えればそんなところでしょうか。入口には製品がズラーっと一式置かれ、担当者の方が株主に説明していました。動かしてくれればもっとよかったのですが。

山海社長は筑波大学教授でもあられる天才科学者なので、神経質なタイプの方かと思っていましたが、非常に謙虚な姿勢で株主総会を運営されておられましたので、意外でした。株主への説明は、招集通知を読むのではなく、パワーポイントによって社長が説明していくという事業説明会のような進行です。資料は主に決算説明会資料と同じものです。

社長が説明された主な内容は以下のとおりです。決算説明会資料の記載している事項は省いています。

(1)HAL等のデバイスから検出されるあらゆる身体・脳神経・生理・生活情報をビッグデータとして集積解析し、それをまたデバイスに反映し、ヒトの身体の中だけでなく、ヒトと革新的ロボット技術との間で機能を改善させる脳神経系のルートを作り上げる。医療用HALは日米欧で医療機器として認められ、半年前に米FDAからも治療効果を認められた。医師の介入によるデータも取り出され、その解析後の結果が再びデバイスに戻り、より効果的な治療を実現していく。ヒトの脳神経系からスパコンクラウドまでが一気に繋がっていくイメージで展開していく(サイバーフィジカル空間)。

(2)今までのヒトの身体からデータをとるにはセンサーを身体に湿式で接触させなければならなかったが、今後は服の上から心電図が測れたり、髪の毛の上から(頭皮に当てずに)脳波を測る等乾式・非接触でも可能な技術を確立した。

(3)身体が動かない人でも、身体を動かそうとするとそれが微弱な信号としてHALに伝わりHALが動き、その動いたという感覚神経の情報がまた脳に戻り、人とロボットの間でシナプス結合(神経と神経のつながり、神経と筋肉のつながり)が起こる。このような技術を持っているのは世界で当社だけである。

(4)清掃用ロボ:商業施設やビルではGPS電波が入らないので大きい施設をどのように動いて掃除すればいいのかわからない。家庭用ならランダムにやればいいが、広大な建物ではAIやビジョンシステムを使いながらロボットが判断して掃除してゆく必要がある。このロボは人が清掃領域を指示するとそのとおりに掃除してゆくTeaching playbackという機能を持っており、また、世界最速で清掃する。ダストの多寡の状況もマップとして把握できる。

(5)福祉タイプについては「下肢タイプ自立支援用PRO」ができるまで、供給を手控えていたが、バージョンアップ版が出来たので、今後展開していく。

(6)下肢タイプに2Sタイプという身長100cmから使える小型版を開発した。

(7)ALSが進行し、目以外全く動かせなくなった方のために、Cyin(サイン)を登場させた。これにより、そういった方でも文字入力、ナースコール、テレビのチャンネルを変えることができるようになった。また、ALSの疑いを検査するには身体の中に針を差し込まなければならず、凄まじい痛みがある。これを当社はペンシルのようなものを当てるだけで検査できるようにした。

(8)動脈硬化度・不整脈を測るためのバイタルセンサーを開発した。動脈硬化や不整脈を定期健診でやっても検出される頃には手遅れになる。この手のひらサイズのデバイスであれば日常的に病院・職場・家庭で検診し、早期発見できるようになる。そしてこのデータがさらにビッグデータとして集積解析できる。当面BtoBの商品である。

(9)脳卒中患者への対応は患者数も非常に多い(100万人以上)ことから、当社にとっても重要な事業である。脳卒中患者は右か左か片方だけに疾患が出てくるので、これに対応して単脚モデルを開発し、治験が進んでいる。

(10)医療用HALは脊椎損傷に対する治療効果が認められ米FDAから2017年12月に医療機器承認取得した。神経系と身体系の2つの分野で承認が得られたという非常に特殊なケース。そして全米最大のリハビリ病院と合弁事業も開始できた。

(11)動画を紹介1:交通事故で下肢が完全に動かない(脊髄損傷)12歳の少年にHALを装着して、3時間過ぎたころ、突然HALが動き始めた。そしてその後、少年の骨盤周辺が自立で動いた。・・・日経の報道で聞いてはいましたが、少年とお母さんのびっくりようと喜びようは涙なしには見れませんでした。

(12)腰タイプ作業支援用については、防水機能、防塵機能の要望があり、雨天・粉塵の多い場所でも対応できるようになった。また通信機能もあることから、どの現場が過酷であるとか、どういう使い方がされているとか現場の情報が把握でき、IOH(internet  of humans)/IOTでデータを取得し、再びフィードバックできるようになる。また、労務管理にも有用となる。

(13)動画を紹介2:上記(12)の現場での使われ方により、新しい使い方が出た。これが高齢等で足腰が悪くなった方の自立支援である。自分の力ではベッドから立ち上がれなくなった老人にHAL腰タイプを着けると、スクワットができるようになった。これを使った訓練を1か月やると、健常者のようにイスから普通に立ち上がり、スタスタと歩けるようになった。

(14)HAL腰タイプは、第1世代:作業支援⇒第2世代:介護支援⇒第3世代:自立支援と進化し、2015年3月期89台⇒2016年3月期498台⇒2017年3月期988台⇒2018年3月期1219台となった。

(15)今まで物凄い勢いで研究開発を進め、今回でイメージしてきた全ての役者が出そろった。

(16)サイバニクス産業がいよいよ確立されてゆく:ヒトと当社のデバイスがつながり、その情報がクラウドやスパコン等のIOH/IOT情報処理システムに集まってくる。こういったものを通じて事業をまとめていく。そして脳神経系から統合情報処理システムが一体的につながって、ヒトとモノとのビッグデータが集積処理され、統合された革新的サイバニクスシステムが確立されてゆく。

 

・・・・私見ですが、山海社長は、デバイスが優れていることはもとより、そこから得られるビッグデータこそ最も重視している感じで、生き残るためには一刻も早く「サイバニクス産業のプラットフォーマー」の地位を築かなければならないと考えておられるのでしょう。いい製品をつくるだけではAmazon、Googleといった巨大テクノロジー企業が進出してくればひとたまりもありません。日本で数少ない世界のプラットフォーマーになれる企業として懸けてみる価値はあるのかもしれません。

 

主要な質問事項は以下のとおりです。中には頭がおかしいんじゃないかという質問者もおり、山海社長も苦労されていました。高齢者の方は株価の文句ばかりです。決算短信や決算説明資料に開示されてある質問を長々と聞く株主もおられ、時間が制約された中でもっと重要な質問があったはずです。他の株主総会でもそうですが、若い方の質問の方が圧倒的にしっかりしています。

(1)(質問)社長の1年間の自己採点は?(回答)自己採点としてはよくやったと思っている。合格点だと思っている。事業連携や計画に合わせたマイルストーンのクリア、デバイスの開発、業界づくりまで、かなり活発に動いた。

(2)株価は毎日チェックしている。空売りファンドによる空売りで、米FDAの承認等いい情報が出ているにも関わらず、さらなる空売りを浴び苦労している。空売り比率はFDAの承認から急激に増えており、当初6%くらいだったものが、現在11%になっている。しかし一方で、証券会社からの貸株料は高騰しており(15%~30%ではないか)、我慢比べになってきている。いつか手放す(買戻す?)ときが来るであろう。黒字化に向けて準備は整ったので株価を回復させていきたい。

(3)米国のシトロンリサーチのひどいレポートには大憤慨して法的対応等を協議したが、あの程度の対応しかできなかった。業績を高めれば乗り越えていけると考えている。

(4)医療用HALが主力製品であるが、医療用は国の承認という問題があり、その関係でスピードアップしにくい。業績上昇をさらにスピードアップさせるために他のラインナップを揃えた。

(5)配当できないことは心苦しく、ご意見はグサッと刺さっている。支えていただいてる株主様のためにもがんばってゆきたい。未開拓の市場を開拓しているので、時間もかかるが、ブレイクした時には大きくなると考えている。

(6)HPは改善してちゃんと会社の良さをアピールできるようにしていきたい。また、サイバニクス産業をアピールするためにAPPLEのMacWorldExpoのようなことを計画している。

(7)ロボットスーツの月次稼働台数の月次開示は社内で検討していきたい。

(8)災害対策用スーツは技術的にはできている。遠隔操作のような技術もやっている。しかし事業計画には入れていない。今は業績に早く反映できる製品を優先している。

(9)日本で医療の現場で使われているデバイスは当社のモノしかない。トヨタやホンダが取り組んでいるものもあるが、医療レベルに至っていない。最後は治療効果が勝負だと思っているが、かなりアドバンテージがあると思っている。優位性の情報発信についてはいろいろ考えてみたい。

(10)研究開発はコアの技術が他社が追随できないレベルにまでまとまってきた。医療用以外は常に横展開して少しでも収益を上げれるように営業活動をしてゆきたい。

(11)NASDAQ上場については、選択肢としてはあるとは考えているが、現時点では正式な決定としては至ってない(宇賀取締役)。日常的に進めている(社長)。⇒雰囲気的には、言えないだけで、かなり進めているんではないかという感じでした。

(12)営業の強化は海外を中心にヘッドハンティングを行っている。初期の時は数名程度しか営業担当はいなかったが、今は数十名単位いる。営業を増やしていくフェーズにやっと到達した。

(13)川崎の更地は、共同でやっていく方式で検討している。

終了時間は13時20分くらいでした。お土産は①サイバーダインオリジナルキーホルダー、②オリジナルしおり、③山海社長の著書「サイバニクスが拓く未来(筑波大学出版会)」でした。

以上、CYBERDYNE株主総会レポートでした。

 

 

 

 

第5回 3678メディアドゥホールディングス株主総会レポート2018.5.30

 今月最後の株主総会はメディアドゥホールディングスです。3479TKPと開催時間が重なってしまったのですが、TKPは業績・株価とも絶好調であり、むしろ行く必要性が乏しいと判断し、メディアドゥホールディングスの総会に行くことにしました。本社で総会をやるということもこちらを選んだ動機の一つです。

 同社は著作物のデジタル流通事業の会社です。電子書籍の取次業といわれていますが、そう単純なビジネスモデルではないことがわかりました。同社は2013年に東証マザーズ上場、2016年に東証一部に市場変更、2017年に持株会社に移行し、連結決算を2018年2月期より開始しています。昨年業界2位の同社が業界1位の出版デジタル機構を買収し、一気に成長し、売上400億円ほどの大きな会社となりました。

 本総会は10時に開始し、11時25分頃に終了しました。その後休憩を挟み事業説明会を開催しました。終了したのは13時前というロングラン会議でした。特に後半の事業説明会は、開催する必要などないにもかかわらず開催していただき、内容も株主に対して経営者の想いを伝えたいという熱さ・誠実さが強く伝わってくる素晴らしい会議でした。

 地下鉄竹橋駅・皇居の平川門前のパレスサイドビルはかなり古いビルで、その5階の本社会議室で開催されました。席は全部机付きで135席もありました。総株主は4231名ですが、出席株主は80名ほどではなかったかと思います。背広・ワイシャツ姿の方も多く、今までの総会とは雰囲気が違いました。意外にもプロジェクターはなく、総会後、事業説明会の時に搬入されました。高山監査役は欠席でした。高山監査役は兼任多すぎです。総会でも重なったんでしょうか・・・。また、総会に選任していた森取締役が辞退するというアクシデントも発生しています。

 さて、今回の最大のテーマは海賊版サイト漫画村問題です。

 報告は30分ほどで終了し、質疑応答に入りました。概要は以下のとおりです。

1、(質問)3号議案の譲渡制限付株式はどういう目的で発行するのか?(回答)報酬とは別で株主と同じ視点で経営に携わってもらうためにインセンティブとして役員に株式を付与する目的である。過去のストックオプションはすでに付与したものはそのままであるが、インセンティブ付与型ストックオプションの新株予約権は付与しない。

2、(質問)ストックオプションを与えるとき何を指標として与えるのか?(回答)具体的なKPIは定めていない。その対象者の業績に対する貢献度合いを社長が判断して付与している。

3、(私の質問1)海賊版サイト漫画村の問題について4月13日の決算発表から現在までにその影響がどのように変化しているか?(回答)昨年9月より猛威をふるっていた漫画村については4月13日に閣議決定でサイトブロッキングされることになり、漫画村等違法サイトはクローズになった。前期は大変業績に悪い影響を与えたが、それがなくなり当然ながらその後は非常にいい方向に向かっているし、業績にもいい影響を与えると思う。

4、(私の質問2)当社が出資している日本インターネット総合研究所のイスラエル市場上場の動向はどうなっているのか?(回答)一度延期になったが、上場に向けて最終調整している。

5、(私の質問3)電子図書館展開は私の素人的考えでは多数の者が無料で読めてしまうので、会社にとってはかえってマイナスなのでは?(回答)紙の本の貸し出しと同じで、その図書館が電子書籍を例えば3冊分買えば、3人の人にしか同時に貸し出せない仕組みとなっており、問題はないと考えている。

6、役員は3名退任しているが特に問題なし。

7、(質問)海賊版サイトの影響であるが、2018年2月期の目標業績未達について具体的な影響はどれくらいあったのか?(回答)1Q2Qは問題なかったが、3Q4Qに大きな影響があった。しかし具体的な数字ははっきりわからない。

8、(質問)有休消化率はどれくらいか?従業員の男女比率は?(回答)有休消化率は把握できてないが、しっかりとれていると考えている。多分7、8割は取れている。平均で4割くらいが女性の比率

9、(私の質問4)金融債務が100億円を超えており、一方資産はのれんが65億円、投資有価証券37億円でほぼ対応している。金融債務がかなり積みあがっている状況で、さらなる投資を考えたとき、さらに借入金で調達できるのか、それともエクイティファイナンスするのか?(回答)現時点では買収案件はなく、金融機関から調達する必要も、エクイティファイナンスする必要もない。もしそういう案件があってもスピード感や希薄化を考えれば金融機関から調達すべきと考えている。もちろん将来的にはエクイティファイナンスするタイミングがあるかもしれない。

10、(質問)配当性向20%以上といっているが、今年は30%超となっている。今後もできるのか心配(回答)昨年は配当性向20%かまたは10.5円の大きい方を配当するという方針とした。業績が悪かった結果10.5円となり配当性向が30%超となってしまった。今後も配当性向20%を維持する方針である。株主の皆様に対する利益還元については大きな経営目標と考えている。

11、売上原価が高いのは出版社にお支払いする印税があるから、コンテンツ卸売り事業が中心なので利幅は決して高くない。システム開発や他事業の開発により原価低減をはかっていく。

総会終了後、休憩を挟んで事業説明会が開催されました。1時間を超える説明会になりました。概要は以下のとおりです。

1、当社の事業理念である「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人に届けること」を達成するためのMAを進めてきた。①電子書籍の創作支援(コンテンツを作るための会社)、②販促支援(マンガ新聞、ブラウザーの提供会社Lunascape)、③電子書籍の取次(出版デジタル機構)の3つにセグメンテーションされる。①が上流、②が中流、③が下流、全てをおさえたい。

2、グループ経営の経営陣はC職会議という閣議制度にし、CEO、COO、CFO、CTO、CAO、CBO、CHOで経営の重要事項を決めてゆく

3、出版社等のコンテンツホルダーから仕入れ、それを卸すという流通の真ん中に立つビジネスモデルは上場会社では当社だけ、業界でも当社入れて2社のみ(3社あったが出版デジタル機構を買収したので)

4、当社の株価であるが、上場当初は時価総額400億円まで行った。当時は環境が良かった。過去最大の出来高になったのは出版デジタル機構を買収した時。昨年の9月以降に顕在化した漫画村の影響が出てから株価は下げはじめた。そして先日のサイトブロッキングの閣議決定から株価が少しずつ戻り始めている。昨年の2Q時点で時価総額350億円までいった。現在220億円くらい。まだまだ頑張らなければならない。まずは、過去最高の時価総額400億円を超えるくらいの事業展開をしてゆきたい。・・・・・ここまで具体的に株価について語ってくれた経営者は初めてです!

5、電子書籍関連のインフォコム・パピレス・ビーグリー・イーブック・アルファPと比べてPERは一番高い。ROEは中間の位置となっている(9%)。10%を超えるように成長しなければならない。

6、当社のミッションは「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人に届けること」であるから、自分たちの利益だけを考えて行動していない。電子図書館などは理念がなければやってないだろう。そして目指すべきは「パブリッシング・プラットフォーマー」となることである。業界NO1の電子書籍業者になることではない。すべての電子書籍の流通に関してはメディアドゥのシステムを通過する、全てのコンテンツに関してメディアドゥ系列で仕入れる、そういうような中間のポジションとしてプラットフォーマーになりたい。そのために組織は①クリエイティブであること、②イノベーションを続けること、③プロデューサーであること(下請けであってははならない、他人が作ったものを売る営業会社であってはならない)、であるべきと考えている。

7、電子書籍業界もかなり大きくなっており、成長率に関しては落ちていく可能性がある。当社は、自らマーケットを拡大させ、その中のシェアを拡大してゆかなければならない。

8、書籍の市場とその電子化割合は以下のとおりであり、コミック以外はまだまだ開拓余地がある。

 ➀コミック分野(電子書籍1711億円(51%)紙書籍1666億円(49%)計3377億円)、②文字もの分野(電子書籍290億円(5%)紙書籍5486億円(95%)計5776億円)、➂雑誌分野(電子書籍214億円(3%)紙書籍6548億円(97%)計6762億円)

9、当社の出版業界における現在のポジションが最大の優位性であり、それを確立するためには出版デジタル機構との組織一体化が重要なテーマである。その中でもシステムの統合が最大のテーマである。

10、この後、新しい分野である「音声自動文字起こし、AI要約」の話で、音声自動文字起こしの実演がありました。しゃべった言葉がほぼ同時に文字化され、それが220か国語で同時に文字化できるというシステムです。実際にみるとそのスピードに驚きました。誤起こしもありますが、気にならない程度です。また本をAIで要約し、読むのに3時間かかる本も30分で要約して読めるようにしているそうです。先日AI展があったそうですが、すさまじい評判を呼び、名刺交換1800人としたとのこと。このシステムを早く確立し、定額課金方式等により事業化したいとのことです。

11、AI・ブロックチェーンの研究開発をしており、電子書籍分野の活用ももちろんであるが、さまざまに事業が広がっていく可能性がある。他の電子書籍会社ではキャッチアップできない分野であろうと考えている。

以上のとおり事業説明会は素晴らしいものでした。一番いい株主総会だったと思います。お土産はKAORUの木頭柚子というラスクで、超絶品でした。お土産も相当吟味してるのでしょう。こんなとろけるようなラスクは食べたことがありません、渋谷ヒカリエB2階に入ってるらしいです。超美味しいですから是非ともご購入ください。家族の分の議決権行使書も持っていったら人数分3つもらいました。そんな小さなやさしさもよかったです。

以上メディアドゥホールディングス株主総会レポートでした。

 

 

 

第4回 7807幸和製作所株主総会レポート2018.5.29

 第4回は歩行車・シルバーカー・杖等福祉用具製造販売の幸和製作所の株主総会です。本社は大阪府堺市です。

 2017年11月にジャスダック市場に上場した同社ですが、上場当初は高齢者・介護市場銘柄として一時は6000円を超える株価となりましたが、最初の決算発表で来期が減収減益予想ということで暴落しました。

 会場は、中百舌鳥駅から歩いて5分くらいの堺商工会議所です。非常に天井の高い結婚式場のような部屋で、机付イス24席、イスのみ24席計48席ありました。総株主数1482名に対して出席株主は15名と非常に少なかったです。プロジェクターの設置もあり、市場解説等に使用されていました。朝10時から開始された株主総会は、玉田社長が初めての外部株主を招いての株主総会ということもあり、極度に緊張されているように見受けられました。31回目の株主総会であることから、2代目社長と思われます。いかにも「南大阪の男」という雰囲気のイケメンです。

 15分ほどで終わった説明の後、質疑応答となりましたが、最初の質問者の方は予想通り最初の決算発表での減収減益予想による株価暴落を責められました。私は基本的には株価のクレームを総会で言うのはいかがなものか、と思いますが、今回の件は上場すぐの決算発表ですから気持ちはよくわかります。同社株を支持していた株式評論家も怒り狂ってましたから・・・。まあ、幹事証券会社の責任も重いと思いますが・・・。最初からの厳しい意見に社長もしどろもどろになってしまい、聞かれていることは決算説明資料にすべて記載されている基本的なことなのですが、「事務局審議」となり、相撲の物言いのような時間が過ぎてゆきました・・・・。

 その後の質疑応答の概要は以下のとおりです。

1、(質問)平成32年2月上市予定の介護ロボットの介護保険の適用はあるのか?(回答)安全性有効性が確認されれば、厚労省の方で決めるのでわからないが、過去のは適用を受けているので、引き続き努力する。

2、アルミ価格の上昇が原価悪化要因になっており、値上げ等も含めて検討中である。

3、(私の質問1)歩行車、シルバーカー、杖の当社の市場シェアはどれくらいか?

(回答)平成27年で歩行車27%、シルバーカー49%、杖17%・・・かなり高いので驚きました。なんと歩行車・シルバーカーは生産量世界一とのことです。

4、(私の質問2)転倒防止ロボット、見守りロボットの共同開発のプレス発表をしてるが、当社がどのような貢献ができるのか書かれてないので教えてほしい。(回答:開発本部長)転倒防止ロボットについてはデザイン・設計・評価(人型ダミーで転倒しないか実際にリハビリ病院で試験する)、見守りロボットについてはMJI社の技術を使い介護施設・病院で実験検証する。

5、(私の質問3)プレス発表した韓国の大型受注は継続性があるものなのか?(回答:営業担当役員)入札により受注したものなので、継続性は不明。しかし韓国は高齢化が著しく、入札案件が増えており、韓国進出を進めてゆきたい。

6、(質問)私の母が骨折したので貴社のシルバーカーを購入したが、非常にいい商品だった。友達も買いたいと言ったが、どこで買ったらいいのかわからなかった。年寄が(親族の協力なく)自分一人で簡単に買えるような販売の仕方等の環境を整えた方がいいのではないか?(回答)サポートセンター等に電話していただきたい。・・・確かにシルバーカーのブランドはまだ誰も気にしてないと思うので、幸和ブランド「TacaoF」が欲しくて買いに来る客を増やすというブランド戦略も必要かなとは思いました。

7、EC市場はシェアが低いのでがんばりたい。

8、海外は韓国に介護保険が導入され大きなマーケットとして捉えている。台湾も介護保険に近いものが出来上がってきており、営業活動をしてゆきたい。

 社長も後半は余裕が出てこられました。高齢化がますます進む中でこれほどのシェアを有しているのは魅力ですね。ロボットも見せかけではなく、開発本部長もおられ、しっかり開発に携わっているようです。今後の成長を期待したいものです。総会は50分ほどで終了しました。ペットボトルの水をいただきましたが、お土産はなしです。

 以上幸和製作所株主総会レポートでした。

第3回 3550スタジオアタオ株主総会レポート2018.5.28

 第2回TOKYO BASEでは、土日月の3日間で1000を超えるアクセスをいただきました。ありがとうございます。同社の人気を物語るとともに、やはりそれほど株主の皆様が株主総会に関心ありながら行けない、アクセスできない状況にあるということが改めてよくわかりました。

 第3回はスタジオアタオです(・・・スタジオアリスではありません)。同社は2016年11月に東証マザーズに上場しました。現在の時価総額は130億円。国産にこだわるモノづくりを志向しているという意味では西のTOKYO BASEとも言うべき会社です。値引き販売をしないというブランド価値を重視する姿勢も似ています。神戸を本社とし、バッグ・財布等小物の企画・販売を事業としています。瀬尾社長はもともとアパレルデザイナーでしたが、トレンドの早さや中国での生産に疑問を感じ、本事業へ転換したとのことです。

 会場は神戸国際会館です。三宮駅からすぐの神戸の会議・催し物は全てここで行われるという場所です。国際会館地下1階の非常にいい場所にアタオのお店があります(スタバの真横)。総会前に寄ったのですが、バッグ・財布ともなかなかの質感(所詮はオヤジの感性ですが・・・)でした。また狭いスペースの中でも意外に店づくりうまいなーと思いました。中国人らしき男性3名が買い物をしていました。

 さて、会議室は100坪超くらいの部屋で56席全部机付きです。株主数975名に対して出席者は約30名、うち女性が10名程度で比率高いです。ディスプレイでの演出はなしです。

 午後1時30分に株主総会は始まり、40分ほどで終わりました。瀬尾社長は一見頼りなさそうにも見えたのですが、受け答えを見るとしっかりしていて、無難に総会をこなしておられました。ただ、いまいち趣旨が不明瞭な質問もあり、回答もファジイなものも多く、文章としては本当にまとめづらいです。

 主な質疑応答の概要は以下のとおりです。

1、中期の課題としては、既存店の建物オーナーに増床をお願いしている。出店面積が小さく、坪当たり売上は高いので、一見効率がよく見えるが、導線やゆっくり買い物してもらうとか、ブランド維持のためにはもっと広い店舗にしたい。・・・筆者も国際会館の店で感じました。

2、(質問)アパレルでも国内生産者が激減してるが、当社でも生産体制は大丈夫なのか。生産が追いつかず、欠品を出している状況はないか?(回答)ATAOブランドは国内生産ということにこだわっているブランドであるが、IANNE(イアンㇴ)それ以外のブランドには必ずしも国内生産に固執しているわけではない。生産体制の状況を見ながら機会損失が出ないように柔軟に進めてゆく。ただ、リュック等従来出していなかったカテゴリーの商品については、売れ行きが良すぎて欠品を出している。

3、セールスしない商品ばかりなので、それについての株主優待もしない。

4、ブログはうまくいっている。月間ページビューもセッションも滞在時間も前年比大幅増となっている(何%増か聞き逃しました)。回遊性重視で、Twitterとかの拡散に重きを置いていない。

5、(私の質問)当社のインターネット販売を一手に引き受けているデジサーチ社(19%保有の大株主でもある、以下デジ社)は、①インターネット販売では当社から卸値で仕入れ、それに加えて、②販売促進費、配送代金回収手数料を受け取っている。そこで、①のデジ社への卸値と小売値の料率を教えてほしい。次に、②の料率は2016/2期43.6%、2017/2期38.4%、2018/2期38.2%となっているが、インターネット販売が増加すれば今後料率は下がるのか?さらに、この3期間インターネット販売比率が伸びてない(51.2%、52.0%、52.2%)が、デジ社に依存してて不安な点はないか?(回答)卸値と小売値の料率は教えられないが、業界水準より少し当社に有利なくらいである。また、販促費・手数料の料率は必ずしも下がるとは確約できるものではないが、販促費の効率化は一番の課題として考えている。ブログ等SNSの取り組みで販促効率を上げたい。デジ社に決して依存しきっていない。ATAOブランドは全面的にデジ社だが、ROBERTA(ロベルタ)ブランドは他社であり、キャラクタービジネスILEMER(イルメール)ブランドは全て内製化でやっている。今はオンライン上での販促はAI化しており、もはや一つの広告代理店に依存するような時代ではない。全然不安はありません。・・・ここでの説明は自信に満ち溢れておられましたので大丈夫でしょう。

6、(質問)海外進出はどこにするのか?(回答)どこの国とか何も決めてない。まず海外からの越境ECでアジア圏をとっかかりとしたい。

7、既存のお客様にはアプリを使ったアプローチを考えている。

8、(私のクレーム)決算短信に株主総会開催日が記載されるので、それを見て午前なのか午後なのかIRに問い合わせたが「招集通知」を見ろということで、答えてくれなかった。決算発表から招集通知まで約1月近くあるし、2週間前ではスケジュールが調整できないので、教えてほしかった。(回答)すいません。WEBで早く開示できるよう努力する。

私のシンプルな見立てでは、やはりデジ社に対する負担が大きいので下げてほしいなーというのが実感です。デジ社も19%の大株主なのですから、と懇願したいです。しかし実際に社長に会うとかなり情が湧きます。商品も店舗も初めてナマでみれて良かったです。引き続き応援しようと思います。お土産はなしです。

以上、スタジオアタオ株主総会レポートでした。

 

第2回 3415TOKYO BASE株主総会レポート2018.5.25

第2回は新興アパレルの旗手であるTOKYO BASEの株主総会です。

2015年9月に東証マザーズへ上場した同社は、テンバガー(10倍株)となり市場で話題となりました。同社の商品は中高価格帯のモード系で、MADE IN JAPAN への強いこだわりを武器に広く支持を集め、急成長を続けています。

時価総額は現在484億円であり、アパレル大手上位であるオンワード1471億円、アダストリア784億円、TSI 851億円と比べればまだ低く、ビジネススタイルや成長の優位性を考えれば今後これらの銘柄を超えてくる可能性は十分です。

総会はJR渋谷駅西口から徒歩3分ほどの渋谷区文化総合センター大和田というビルで午前10時30分より開催されました。渋谷区の公民館のような地味なビルでした。80坪ほどの会議室に132席イスのみで机はありませんでした。ディスプレイによる画像やパワーポイントによる説明もなく、前回報告のアセンテックに比べても演出性はない印象でした。出席者は総株主数7782名に対して60名弱といったところです。昨年の総会は閑散としていたということで、やはり人気株となり出席者も増えたようです。

 

 こんなファッションブランドの会社でも出席者はやはり高齢な方が多く、女性も4~5人で、ファッション性の高い株主の方は1名だけでした。本当に若い株主の出席を促進するためには、①もっと早めの株主総会開催日時の発表、②平日夜や土日の開催、③ネットでの配信、を真剣に検討してほしいものです。老人会ではないのですから・・・

谷社長をはじめ、役員の方々もダークスーツでバシッと決めておられました。総会の進行は社長が招集通知を読み上げる形で進められました。

新興株の投資というのは、会社の事業内容や業態は変化することも多く、事業というよりは経営者に投資する側面が強いといえます。そのような意味で一般株主が経営者に会える唯一のチャンスである株主総会に行くわけですが、今回は写真の雰囲気とは少し違いましたが、いろんな意味で好印象の社長でした。カリスマ感も十分です。

質疑応答は意外に多く、20個くらいあったでしょうか。総会が終了したのは11時57分頃でした。

中には「俺は株が儲かれば会社のことはどうでもいいんだ」というような心無いことを発言される方もおられましたが、総じて参考になる質疑応答であったと思います。

主な内容は以下のとおりです。

1、2018年2月期において最大の課題はSTUDIOUSブランドのEC販売(ZOZOTOWN)で原価率の高い商品を販売したが、それが不振だった。今後は実店舗と同じ商品をZOZOでも販売してゆく。また、STUDIOUSのデザイナーズブランド数を広げすぎた。もっと絞り込んでゆく。

2、当面のターゲットを売上高1000億と宣言したが、期間は10年程度と考えている(現在127億)

3、(質問)国内産ウイスキーの品不足が話題となっているが、アパレルも同様で市場における国内産比率は3%を切っている。国内生産者が激減する中でどうやって国内産を維持してゆくのか?(回答)そのとおりであり、国内アパレルの市場規模は10兆円を切り、うち国内生産は3%から4%と言われている(昔は20%~30%)。最大の原因は後継者不足。売上1000億円を目指すうえで最大のネック。今後は地方の2代目の方や東京でアパレル生産に携わりたい人を東京に集結させ、自ら基盤をつくってゆきたい。そしてコストが安いからといって海外に生産を移すなどは絶対にせず、国内生産者を裏切らないことで生産基盤を築いてゆきたい。

4、海外進出を初めて香港にした。やっと香港賃料が下がり始めたので出店した。当初は苦しんだが、中国香港の風土気候を理解して、1年たって順調に推移している。今後も香港のさらなる出店、また中国本土への出店を考えている。長期的にはNY、パリにも出店したい。

5、UNITED TOKYOブランドはすべてオリジナルブランドで、一般のアパレルの原価率が20%~30%なのに対して同ブランドは50%の原価率で質の高いものを提供している。その代り値引きをしないスタイルで支持を集めてきた。今回新ブランドのPUBLIC TOKYOは同様のコンセプトで始めた初のカジュアルブランドである。カジュアルといっても質の高い2万円前後のハイエンドカジュアルである。競合が激しいレッドオーシャン市場であるが、①原価率の高さ(質)、②接客力(他社は接客あまりしない)、③ブルゾン・ダウンといった個性的な品揃え、で勝負してゆきたい。

6、(質問)海外売上を高めるためには実店舗よりも越境EC(海外に対するEC販売)という手法があると思うが、どうか?(回答)やってみたが、非常に厳しい。中国独特のEC商習慣(チャットでのやりとりなど)についていけなかった。今後は実店舗の補完として展開してゆく。

7、(私の質問)EC売上を制する者がアパレルを制すと言われているが、当社は主にモール系であるZOZOを利用している一方で、オンワードなどは自社サイトに特化している(日経新聞によると一般にZOZOで取引する場合ZOZOに3割強の手数料を取られると言われている)。当社のZOZO取引を決算書から推定するとかなりいい条件で取引していると思われるが、どうか?そうならば将来的にも自社サイト比率を増やすのではなくZOZO中心のままでやってゆくのか?

(回答)ZOZOとの付き合いは長く、いい条件でやっていただいてる。具体的には言えない。今後もZOZOでやってゆきたい。しかし自社サイトもおろそかにせず、万が一ZOZOに何かあった時でも自社サイトで支えられる体制にはしてゆきたい。特に単価の高い商品等ZOZOでは扱いにくい物は自社サイトでやっている・・・・筆者の試算では有価証券報告書に販売手数料の金額が記載されており、それがすべてZOZOへの支払いだと仮定すると、ZOZO売上高(売上高×EC率×ZOZO率)に対する手数料率17.8%と試算されます。あくまで推定ですが・・・

8、今後の出店も東京、名古屋、大阪、福岡を中心に出店していく。札幌・仙台・浜松等の中規模都市には出店しない(社長は浜松の出身とのことです)。

9、月次売上の開示は売上規模が小さく、ミスリードの可能性あり当面予定はない。

10、ZOZOのマーケットが低価格傾向になっており、クーポンを利用した安売り競争でどこも利益が取れなくなっている。ZOZOで安い商品を出していたがやめた。ZOZOの中で予約の先行受注というやり方で質を高めたい。マーケットインにはまらずプロダクトアウトでやりたい。

11、MAは基本的に自己資金でやる。

12、株主優待は考えてない。

本当にいろいろ質問がありました。谷社長もクレームや暴言を言う株主の方にも忍耐強く説明されていて、立派でした。最後はみなさん拍手で総会は終了しました。お土産はなしです。

以上TOKYO BASE株主総会レポートでした。

第1回 3565アセンテック株主総会レポート2018.4.25

 アセンテックの株主総会に行ってきました。アセンテックは2017年4月に東証マザーズに公開した仮想デスクトップのソリューション企業です。

 株主総会開催場所はJR秋葉原駅からすぐの富士ソフトアキバプラザビルでした。50坪ほどの会議室で開催され、40名弱の株主が参加していました。2354名の株主がいる割には少ないなーという印象でした。外国人の方もいました。机付きの席が27席設けられていたので資料を開けるには便利でした。13時に始まり、14時5分に終わりました。

 IT業界であり、HPも比較的華やかな感じであることから、もっと派手な感じの会社かと思いましたが、役員の方は皆さん非常に堅くまじめな雰囲気の方ばかりでした。外部株主を招いての初めての株主総会ということもあり、緊張されていたことでしょう。佐藤社長が議長となり、全ての議事進行が行われました。

 最初に事業の説明や成長可能性に関する解説がありました。やはりすごいと思ったのは海外テクノロジーベンダーとのアライアンスぶりでした。2018年1月期もNVIDIA、HP、CUATUMといった名だたる企業との提携に成功しています。HP(ヒューレットパッカード)では最上位のパートナーとしての扱いを受けており、NVIDIAとも本格的に協業は始まっているとのことでした。

 株主からは、①大手ベンダーとのすみ分け、②社員の労働環境、③離職率・生産性等の質問がありました。離職率はIT業界9%に対して、4%ほどに抑えられている、36協定は厳格に守っており、売上は伸びているが残業は減っている、働き方改革のリーディングカンパニーを目指す、とのことでした。また、筆頭株主になっている方は役員でもなく、誰か?という質問もありました。通常なら答えないことも可能かと思いましたが、創業のころからエンジェルとして長期投資していただいている方であるということで、親切に説明されていました。

 私は、事業領域や取引先は素晴らしいが、ビジネスモデルに疑問がありました。というのも、売上高は2017年1月期3275百万円・2018年1月期4326百万円・2019年1月期計画4600百万円と伸びていますが、一方で売上総利益は2017年1月期636百万円・2018年1月期698百万円・2019年1月期計画750百万円と伸びがかなり抑えられているからです。売上総利益こそが会社内部に残る「本当の売上高」というべきものであり、ここが伸びてこないと業績面で本当に成長軌道に乗ったとは言えません。原因はいまだ商品の仕入販売というビジネスへの依存度が高く、粗利率の高いサービス売上や継続課金収入の売上がまだまだ少ないからです。そこで私からは、これら利益率の高いサービス売上や継続課金収入が本格的に伸びてくる時期はいつからなのか?という質問をしました。社長はいつからかという時期については明言されませんでしたが、売上高に占める割合を20%に早く持っていきたいとのことでした(2018年1月期13%)。株価が厳しい状況なので早くそこまで持っていっていただきたいですが、時間は少しかかりそうです。しかし着実に手は打っているという感じでしたので、長期保有で成長性を見守りたいという気持ちになりました。海外ベンダーはもとより、セコムや生命保険会社等これからも取引先の拡大を期待せずにはいられません。

 最後に、おみやげはニューオータニのリーフパイ12枚入りでした。めちゃくちゃ美味しかったです。こんなに美味しいリーフパイがあったのかと大阪人の私は驚きました。

 以上アセンテック株主総会レポートでした。