公認会計士がやる!株主総会レポート

公認会計士による新興株の株主総会出席レポート

第2回 3415TOKYO BASE株主総会レポート2018.5.25

第2回は新興アパレルの旗手であるTOKYO BASEの株主総会です。

2015年9月に東証マザーズへ上場した同社は、テンバガー(10倍株)となり市場で話題となりました。同社の商品は中高価格帯のモード系で、MADE IN JAPAN への強いこだわりを武器に広く支持を集め、急成長を続けています。

時価総額は現在484億円であり、アパレル大手上位であるオンワード1471億円、アダストリア784億円、TSI 851億円と比べればまだ低く、ビジネススタイルや成長の優位性を考えれば今後これらの銘柄を超えてくる可能性は十分です。

総会はJR渋谷駅西口から徒歩3分ほどの渋谷区文化総合センター大和田というビルで午前10時30分より開催されました。渋谷区の公民館のような地味なビルでした。80坪ほどの会議室に132席イスのみで机はありませんでした。ディスプレイによる画像やパワーポイントによる説明もなく、前回報告のアセンテックに比べても演出性はない印象でした。出席者は総株主数7782名に対して60名弱といったところです。昨年の総会は閑散としていたということで、やはり人気株となり出席者も増えたようです。

 

 こんなファッションブランドの会社でも出席者はやはり高齢な方が多く、女性も4~5人で、ファッション性の高い株主の方は1名だけでした。本当に若い株主の出席を促進するためには、①もっと早めの株主総会開催日時の発表、②平日夜や土日の開催、③ネットでの配信、を真剣に検討してほしいものです。老人会ではないのですから・・・

谷社長をはじめ、役員の方々もダークスーツでバシッと決めておられました。総会の進行は社長が招集通知を読み上げる形で進められました。

新興株の投資というのは、会社の事業内容や業態は変化することも多く、事業というよりは経営者に投資する側面が強いといえます。そのような意味で一般株主が経営者に会える唯一のチャンスである株主総会に行くわけですが、今回は写真の雰囲気とは少し違いましたが、いろんな意味で好印象の社長でした。カリスマ感も十分です。

質疑応答は意外に多く、20個くらいあったでしょうか。総会が終了したのは11時57分頃でした。

中には「俺は株が儲かれば会社のことはどうでもいいんだ」というような心無いことを発言される方もおられましたが、総じて参考になる質疑応答であったと思います。

主な内容は以下のとおりです。

1、2018年2月期において最大の課題はSTUDIOUSブランドのEC販売(ZOZOTOWN)で原価率の高い商品を販売したが、それが不振だった。今後は実店舗と同じ商品をZOZOでも販売してゆく。また、STUDIOUSのデザイナーズブランド数を広げすぎた。もっと絞り込んでゆく。

2、当面のターゲットを売上高1000億と宣言したが、期間は10年程度と考えている(現在127億)

3、(質問)国内産ウイスキーの品不足が話題となっているが、アパレルも同様で市場における国内産比率は3%を切っている。国内生産者が激減する中でどうやって国内産を維持してゆくのか?(回答)そのとおりであり、国内アパレルの市場規模は10兆円を切り、うち国内生産は3%から4%と言われている(昔は20%~30%)。最大の原因は後継者不足。売上1000億円を目指すうえで最大のネック。今後は地方の2代目の方や東京でアパレル生産に携わりたい人を東京に集結させ、自ら基盤をつくってゆきたい。そしてコストが安いからといって海外に生産を移すなどは絶対にせず、国内生産者を裏切らないことで生産基盤を築いてゆきたい。

4、海外進出を初めて香港にした。やっと香港賃料が下がり始めたので出店した。当初は苦しんだが、中国香港の風土気候を理解して、1年たって順調に推移している。今後も香港のさらなる出店、また中国本土への出店を考えている。長期的にはNY、パリにも出店したい。

5、UNITED TOKYOブランドはすべてオリジナルブランドで、一般のアパレルの原価率が20%~30%なのに対して同ブランドは50%の原価率で質の高いものを提供している。その代り値引きをしないスタイルで支持を集めてきた。今回新ブランドのPUBLIC TOKYOは同様のコンセプトで始めた初のカジュアルブランドである。カジュアルといっても質の高い2万円前後のハイエンドカジュアルである。競合が激しいレッドオーシャン市場であるが、①原価率の高さ(質)、②接客力(他社は接客あまりしない)、③ブルゾン・ダウンといった個性的な品揃え、で勝負してゆきたい。

6、(質問)海外売上を高めるためには実店舗よりも越境EC(海外に対するEC販売)という手法があると思うが、どうか?(回答)やってみたが、非常に厳しい。中国独特のEC商習慣(チャットでのやりとりなど)についていけなかった。今後は実店舗の補完として展開してゆく。

7、(私の質問)EC売上を制する者がアパレルを制すと言われているが、当社は主にモール系であるZOZOを利用している一方で、オンワードなどは自社サイトに特化している(日経新聞によると一般にZOZOで取引する場合ZOZOに3割強の手数料を取られると言われている)。当社のZOZO取引を決算書から推定するとかなりいい条件で取引していると思われるが、どうか?そうならば将来的にも自社サイト比率を増やすのではなくZOZO中心のままでやってゆくのか?

(回答)ZOZOとの付き合いは長く、いい条件でやっていただいてる。具体的には言えない。今後もZOZOでやってゆきたい。しかし自社サイトもおろそかにせず、万が一ZOZOに何かあった時でも自社サイトで支えられる体制にはしてゆきたい。特に単価の高い商品等ZOZOでは扱いにくい物は自社サイトでやっている・・・・筆者の試算では有価証券報告書に販売手数料の金額が記載されており、それがすべてZOZOへの支払いだと仮定すると、ZOZO売上高(売上高×EC率×ZOZO率)に対する手数料率17.8%と試算されます。あくまで推定ですが・・・

8、今後の出店も東京、名古屋、大阪、福岡を中心に出店していく。札幌・仙台・浜松等の中規模都市には出店しない(社長は浜松の出身とのことです)。

9、月次売上の開示は売上規模が小さく、ミスリードの可能性あり当面予定はない。

10、ZOZOのマーケットが低価格傾向になっており、クーポンを利用した安売り競争でどこも利益が取れなくなっている。ZOZOで安い商品を出していたがやめた。ZOZOの中で予約の先行受注というやり方で質を高めたい。マーケットインにはまらずプロダクトアウトでやりたい。

11、MAは基本的に自己資金でやる。

12、株主優待は考えてない。

本当にいろいろ質問がありました。谷社長もクレームや暴言を言う株主の方にも忍耐強く説明されていて、立派でした。最後はみなさん拍手で総会は終了しました。お土産はなしです。

以上TOKYO BASE株主総会レポートでした。