公認会計士がやる!株主総会レポート

公認会計士による新興株の株主総会出席レポート

第10回 6552GameWith株主総会レポート2018.8.22

第10回は、ゲーム攻略サイト運営のGameWithです。

同社は、2017年6月に東証マザーズに上場しました。①ゲーム攻略記事、➁ゲームレビュー(ゲームの紹介記事)、③ゲームユーザー交流サイト、④ゲームタレントによる動画配信(YouTube)、という4つのサイト運営によりゲーム会社等からネットワーク広告収入・タイアップ広告収入を得るという国内市場のみを対象としたビジネスモデルです。ここまでスマホゲーム市場の成長と共に業績の右肩上がりが続いてきましたが、スマホゲーム市場が成熟し、ユーザー数が横ばいになりつつあり、早くもビジネスモデルの転換期を迎え、この度、国内事業メディアから脱皮し、「世界のゲームインフラになる」という中期事業構想・中期事業戦略を発表しました(詳しくは会社説明会参照)。

株主総会は、本社のある六本木ヒルズ森タワーの49階で朝10時より開催されました。会場は机付で約100席、出席者は70名ほどでしょうか(総株主数7970名)。大画面のディスプレイがあり、株主発言マイク席が2か所設けられています。スピーチプロンプターまで使っている株主総会は初めてです。社長は29歳、過去の株主総会の社長の中では最もイケメンです。

総会終了後には会社説明会が開催されました。

監査役監査報告、ディスプレイ画面による事業報告の後、質疑応答に入りました。

 

(質問1)流動資産が多く、有利子負債もないが、このお金をどのように使うのか?(回答1)財務基盤の確立と積極的な事業投資を行っていきたい。特に海外展開と新規事業領域にキャッシュを使っていきたい。

(質問2)ゲーム記事を従業員が盗用する場合や、逆に盗用される場合、事業にどんなリスクがあるか?(回答2)当社の記事盗用問題が起こったことはお詫び申し上げたい。盗用先とは和解した。社内のガイドラインを改め、社員教育を徹底し、再発防止に努める。逆に盗用されることもあるが、それによって業績に影響したことはないし、PV数にも影響はない。

(質問3)今回の役員議案が役員5名から3名に減少する提案がなされている。社長以外の2名は社外取締役でしかも兼務が非常に多い。人数が少なすぎないか?(回答3)社外役員の村田氏は兼務多いが上場会社は当社のみである。武市氏はゲーム業界で経営をやってきて知見を持っており、当社の意思決定に適切なアドバイス・判断をしていただける。経営が多角化しており、その中で取締役が全ての事業に干渉・精通するのが難しくなっており、執行役員制を導入した。執行役員が業務執行における最高責任者ということで適切に判断できる人が迅速に意思決定を行うことで事業を伸ばしていく。

・・・・しかし取締役が3名だけで社長1名だけが常勤取締役という上場企業は初めてです。執行役員の相馬さんはCFOで経営戦略室長と紹介され、会社説明会も社長と2人だけで出席しました。CFOも取締役でないとはどういうことなのでしょう。株保有も社長1名だけですし、本当に特殊な会社です。まあ、取締役会なんて現実は儀式に過ぎない会社が多いので効率的といえば効率的ですが・・・。

(質問4)株主構成においてファンドが多いが、株価が下がるたびにどこかのファンドが売ったのではないかと噂される。ファンドとか、東証1部昇格とか含めて株主問題を今後どう考えるのか?(回答4)(執行役員相馬さん)東証1部へのステップアップについては公表しているところであるが、流動比率が低く、要件を充足していない。適当な手当てをして流動比率を確保してゆきたい。また、IRの方針だが、長期的な企業価値向上を積極的に推進しようとしている。この度中期事業戦略を公表したが、公表しただけでなく、実現するためにしっかりと経営に邁進し、その進捗状況を株主に説明してゆく機会を増やし、株価形成をしてゆきたい。

(回答5)中国のゲーム規制の影響は、今のところない。今後はわからないが当社は国内市場なので直接影響はないと考えている。

 

以上で株主総会は終了しました。終了10時40分。15分の休憩を挟み、会社説明会が行われました。

 

(会社説明会)

会社説明会は、国内事業メディアから脱皮し、「世界のゲームインフラになる」という中期事業構想・中期事業戦略の具体的展開の説明です。その内容は以下の4つです。

(1)海外展開

(2)ゲーム×ブロックチェーン

(3)eスポーツ

(4)ゲーム×資金調達

映像解説→社長の説明→質疑の流れでしたが、各項目ごとにまとめて報告します。

(1)海外展開

これまでは国内メディア事業で売上をつくってきたが、今後は海外展開や新規事業領域をテーマに事業をすすめていきたい。台湾版GameWithは順調で、東南アジアゲーム攻略サイト会社にも投資した。また、フィリピンに拠点を作り英語圏に向けて準備している。すでにメディア自体はリリースしている。今後記事を開始していく。自前でやるというだけでなく、海外の攻略サイト会社への出資もどんどんやり海外進出のスピードを高めたい。

英語圏の攻略サイトはCGM型といってユーザー投稿型のサービスが大きなシェアを持っている。日本もかってはそうだったが、当社がプロのライターを育てライター雇用型という質の高いビジネスモデルを作った。CGM型は投稿者がビジネスとしてやっているわけではないので、質や継続性に問題がある。当社のビジネスモデルはコストは高いが質や継続性の面で優位性がある。

(2)ゲーム×ブロックチェーン

今のゲームはゲーム会社が提供するゲームをユーザーがお金を使って楽しむが、ブロックチェーンのゲームはお金を使って楽しむだけではなく、そのゲームの中で手に入れたレアアイテムをユーザーが自由に他のユーザーに売却してお金を得て生活することが可能になってくる。ゲーマーがリスペクトされ、ゲームが仕事になり、ゲーム内の活動がGDPを構成する、というような世界観を目指している。

ブロックチェーンによるゲーム自体も当社が開発する。未開拓市場であり、当社が市場・事例を作ってゆきたい。ブロックチェーンのゲームが浸透すれば、アイテムを売買するプラットフォームとか、ブロックチェーンのゲームを見つけるためのストアとかに参入したい。

ブロックチェーンのゲームを開発するための体制は、人数については言えないが、既にスタートしている。正式に発表できるフェーズに来たらプレスリリースする。

現在のオンラインゲームは国内では基本的にアイテムを売買することは規約で禁じられているものが多い。そもそも現在のゲームはアイテムが売買される設定でつくられていない。そのような設定がないので、売買すると賭博性の問題が出たり、そのゲームの世界観を潰してしまうことになる。一方、ブロックチェーンのゲームはそもそも売買することが前提で作るので、アイテムが売買されることに問題はないと考えている。

ブロックチェーンは分散型のデータベースであり、(当社も含め)特定の企業がデータベースを持つわけではなく、そのゲームのアイテムの取引プラットフォームを誰でも作れたりする。そのようにオープン化することによってゲームをしない人もアイテム売買の市場に参加できるようになる。誰でも参入できる分散型データベースを使ってやるというのは市場の流動性を高めるためにはメリットがある。

ブロックチェーンのゲーム開発は数億円かかるものではなく、もっとコストを抑えたカジュアルなものを考えている。当期(2019年5月期)の業績には寄与しないが、ゲーム自体は今期中のリリースを目指している。

(3)eスポーツ

eスポーツ市場は年27%成長している。当社は、クラッシュロイヤルという世界中でヒットしているゲームのプロチームを作り、アジア大会に参加し、2位という結果を得た。今は1チームだが、複数のタイトルゲームでの展開を考えている。チームとしての参入だけでなく、大会運営も携わってゆきたい。国内市場はまだ未成熟であり、ゲーム会社がゲームのプロモーションの一環としてeスポーツ大会をやりたいというニーズが出てきているので、この大会運営をサポートしてゆく。これによりゲーマーにも目標ができ、熱量が上がる。

具体的なマネタイズの方法は、①大会の賞金、➁ユニホームにつけるロゴ宣伝等のスポンサー料、③ゲーム会社のプロモーション、特に動画を使って有名選手にゲームのプロモーションをさせるのは当社の得意分野である。

プロチームは当社が全面的にコスト負担する方式だけでなく、リーグにチームとして参戦し、リーグ運営側から参加報酬をもらう方式も考えられる。国内市場は未成熟なのでマネタイズモデルはまだ確立していない。リーグに参加し、リーグから参加報酬・賞金・スポンサー料をもらえるようにしたい。国内では賞金も低いので世界大会で勝っていけるチームを作りたい。

また、ゲーマーが憧れの存在になり、高校野球の甲子園のようなゲームの大きな大会が開かれ、そこが子供たちの夢の舞台になるという所を作ってゆきたい。

(4)ゲーム×資金調達

ゲームに係る開発費用はどんどん高騰してきており、従来よりリスクをとってゲーム作りをする会社が減ってきている。一方で、ゲーム市場は新しいゲームがどんどん投入され続けることが絶対的に必要な要素である。そこで、ゲーム会社が全てのリスクを負って開発資金を出すのではなく、ユーザーからの資金を集めてゲームを作り、そのゲームがヒットすれば、ユーザーにも利益還元されるというようなゲーム開発資金調達のプラットフォームをつくってゆきたい(・・・当社自身が資金調達してゲームをつくるのではなく、ゲームを開発する人たちが資金調達するためのプラットフォームを当社が提供する)。

資金調達方法はICOではなく、クラウドファンディングに近い形を考えているが、いろいろなやり方を検討中で、まだ未決定である。既存のクラウドファンディングを利用するのではなく、当社がプラットフォームを開発する。ゲーム開発のリスクは高く、ゲーム開発資金を集めてもゲームがリリースできないことは結構あるので、まずプラットフォームを運営するにあたっては、資金調達するゲーム開発チームの開発能力の審査や調達した後の開発の進捗状況をチェックするなど、他のクラウドファンディング企業ではマネできないユーザーの投資を保護できるようなゲームに特化したプラットフォームを構築する。

マネタイズの方法としては、資金調達時に一部手数料としていただくか、開発されたゲームの収益の一部をもらうか(レベニューシェア)、完成時の売買手数料としてもらうか、いろいろな方法を検討中である。

(5)その他・・・既存国内事業の成長性

当期の売上高予想・(成長戦略投資考慮前の)営業利益予想とも伸びが大幅に減少したのは、スマホのゲーム市場が成熟期に入ったからである。当社の市場シェアは減っていないが、市場そのものが伸び悩んでおり、ユーザー数、PV数は横ばいである。ただ、一人当たり広告収益は伸びている。広告には自動的に配信されるインター広告、アドテクを使ったヘッダー広告、企業とのタイアップ広告等があるが、その中で企業とのタイアップ広告(ゲーム会社から広告料をもらいゲーム攻略記事を書く等)が特に伸びている。

会社説明会は以上のとおりでした。終了は11時50分。お土産はなしです。水とお茶のペットボトルをもらいました。

マザーズ市場は「全銘柄大暴落」と言えるほどの悲惨な様相を呈しており、当社の時価総額も191億円まで縮んでおります。中期事業構想は半信半疑というところですが何とか頑張ってほしいものです。

以上、GameWith株主総会レポートでした。